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LOGISTICS

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#005

一般財団法人 日本気象協会
事業本部 社会・防災事業部
交通ソリューション課
道路・鉄道グループ

寺田 三紗 さん

2018年入社

気象予測で物流事業者をサポート。
荷物が届くという「当たり前」を支える。

気象学との出会いが今の仕事につながっています。

 スペースシャトルが好きで、大学ではロケットを作ることを夢見て航空宇宙学を学んでいたという寺田さん。その過程で気象学に出会う。
 「何気なく見ていた天気予報の裏側で、さまざまな計算が行われていることを知ったことが興味を持つきっかけとなりました。例えば大雪警報では、平野部や山沿いでそれぞれに発令基準が設定されているなど、地域特性を加味して県ごとに異なる基準が設けられています。そのような緻密な設計の数々があるおかげで、日々の予報は行われているのです」
 元々、興味があることは自らが納得するまで調べるという寺田さんは、あることを機にますます気象学への想いを深めていく。それは災害だった。
 「2016年8月に台風10号が岩手県へ上陸し、河川の氾濫によって高齢者施設が流され、残念ながら多くの犠牲者が出てしまいました。ちょうどその頃、祖父が高齢者施設へ入居したこともあり、私自身の想いも強くなったのを覚えています。気象災害が多い日本で、災害が原因で亡くなる方が一人でもいなくなるような世の中にするお手伝いがしたい。そうした気持ちから、気象会社で働きたいと考えました」

悪天候による道路への影響予測が一目でわかる
物流事業者向けサービスを開発しました。

 学生時代の夢を具現化するためには理想的な環境といえる、気象コンサルティングのパイオニアである日本気象協会に入社した寺田さん。入社後に配属されたのが、道路や鉄道の事業者に対して気象情報の提供を行う現在の部署だ。ここで寺田さんは、新人ながらいきなり素晴らしい活躍を見せる。研修の一環として行われたプレゼンテーションの際、考案した物流向けの情報提供サービスの企画案が社内で認められ、その開発が動き出しただけでなく、プロジェクトの中心人物に任命されたのだ。
 「所属部署の『道路事業者への情報提供』という役割と、私が日本気象協会で実現したい『災害による被害を減らしたい』という想いから、道路を最も利用する『物流事業者』に向けて情報提供を行えば、効果的なサポートが実現できるのではないかと考えたのが企画の出発点でした。台風による暴風で横転するトラックや、大雪の影響で動けなくなった車などのニュース映像は、皆さんも何度も見かけたことがあると思います。そうした被害を減少させるために、道路状況の影響予測につながるサービスがあればいいのでは、と思い付いたのです」
 上司に掛け合って予算を確保し、開発に取り組む日々。OJTでお世話になった先輩もそのままプロジェクト入りし、さまざまな面からサポートしてくれた。
 「システムの知識が乏しいので、必要な機能を実現するにはどうすればよいのか、とにかく先輩に質問して(笑)。周囲の協力のおかげで、入社3年目にサービスの運用開始にこぎつけました」
 こうして2020年6月にローンチしたのが、全国の高速道路を対象に気象状況が道路に与える輸送影響リスクを一目で確認できるWebサービス「GoStopマネジメントシステム」だ。

「GoStopマネジメントシステム」の画面(イメージ)。「影響予測表ではICごとに警戒度を色分け表示しており、『紫色だからこの時間帯はリスクが高い』というように、一目で理解できるようにしました」

「2021年度ロジスティクス大賞」を受賞しました。

 「GoStopマネジメントシステム」は、雨、風、雪、吹雪、越波による高速道路の輸送への影響を3日前から1時間単位で、しかもインターチェンジごとに把握できるのが特徴だ。この情報を活用すれば、物流事業者は悪天候に備え、余裕をもって輸送可否の判断や配送時間帯の変更、迂回ルートの計画などができるうえ、ドライバーの安全も確保できる。さらに、荷主企業にとっても商品を出荷するタイミングを早期に調整できるためメリットが多い。
 「気象の知識があまりない方が見てもわかりやすいよう、地図や表の情報表示の方法にはこだわりました。パッと見ただけで直感的に理解できるよう工夫しています」
 サービスを利用する事業者からの評価は高く、「台風の予測を見て、初めて物流を止める判断をした。事前に情報があったので社内外の調整もスムーズに行えたし、その対応評価も高かった」など、多くの感謝の声が届いているという。そうした実績もあり、運用開始翌年には日本ロジスティクスシステム協会が主催する「2021年度ロジスティクス大賞」で見事大賞に輝いた。
 「気象ではなくロジスティクスという、異なる分野で表彰いただいたことは大変光栄です。物流・ロジスティクス業界において気象情報を活用した事前防災が求められているのだと実感しています」

サービス内容が評価され「2021年度ロジスティクス大賞」を受賞。表彰式ではチームを代表して寺田さんが表彰状を授与された。

これからも物流事業者の皆さまをサポートしていきます。

 運用開始後も寺田さんは「GoStopマネジメントシステム」のグレードアップに取り組み続けている。すでに、高速道路に加えて全国の国道も対象となっているほか、より早期に対応を判断しやすいよう事前予測を3日前から6日前へと拡大、スマートフォンでの閲覧も可能にするなど、数多くの機能を追加した。この冬には、物流・道路・気象の3業界が初めて合同で行う、3か月間にわたる大規模な実証実験にも取り組んでいる。寺田さんの挑戦はまだまだ続く。
 「学生時代に物流・ロジスティクスについて知る機会はありませんでしたが、仕事を通じて物流事業者の皆さまにお会いすると『荷物が届く』という当たり前のように思っていたことが、じつは特別なことだったのだと痛感させられます。社会のあらゆる事柄がきちんと機能しているのは、物流事業者の方々がさまざまな場所で活躍されているからなんですよね。皆さまのためにも、安定した供給を行えるように、そしてドライバーの命を守れるように、もっともっと気象情報を活用していけたらと考えています」

「ビルの高層階にオフィスがあるので、天気がいいと富士山がきれいに見えます。天気の変化もよくわかるんですよ」と楽しそうに話す寺田さん。

職種
概要

一般財団法人 日本気象協会
事業本部 社会・防災事業部
交通ソリューション課
道路・鉄道グループ

てらだ みさ

寺田 三紗 さん

2018年入社

趣味はバイオリン。最近は弾く時間が取れず、クラシック演奏をよく聴いているそう。好きなバイオリニストは「バイオリンの神様」と呼ばれるヤッシャ・ハイフェッツで「天から降ってくるようなキラキラした音に心を揺さぶられます」。イスラエルの名バイオリニストで、教育者としても名高いイツァーク・パールマンも大好き。

  • どんな仕事?

    所属部署では、道路事業者や鉄道事業者などの公共交通機関に対して気象情報を提供し、交通運行支援に資するコンサルティングを行っています。それらのほか、私は「GoStopマネジメントシステム」を中心として、道路利用者である物流事業者に対して気象情報を基に算出した道路上の輸送影響リスクを提供し、異常気象時の安全輸送や輸送計画の変更判断をサポートしています。

  • どんな人が向いている?

    自然は私たちの社会にさまざまな恩恵を与えてくれる一方で、ときには災害などによって命を落とすなど“脅威”にもなりうる存在です。それとどのようにして共生していくのか、自ら探求できる人ですね。その課題解決のために、社内・社外にかかわらず人とコミュニケーションを取り、尽力できる人は向いているのではないでしょうか。

  • どんなキャリアプランが描ける?

    若手スタッフでも、気軽に自分の意見を言える環境です。何かしらの問題解決に向けて積極的に行動したり、チャレンジしたりするときにも、周囲の方々が盛り立ててくれます。私が「GoStopマネジメントシステム」の開発に従事した際も、OJTのときの先輩がプロジェクト推進をサポートしてくださいました。

  • この職種の難しさ、面白さは?

    地震や噴火はなかなか予測できませんが、気象はある程度は予測し、対策によってリスクを回避することができます。温暖化が原因とみられる異常気象などこれまで経験のない事象もありますが、予測の精度は年々向上しています。そうした技術や知見を活用し、使命感を持って働く物流事業者の方々を、気象の面からサポートできたら、という想いで働いています。